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東京国立博物館にロハ入場。 [美術]

 ロハ、即ちタダ。
 別に受付を強行突破したとか、団体客に紛れて入場したとか、という訳ではない。今日は「国際博物館の日」ということで、国立博物館の平常展は入場が無料だったのである。日頃、行くとしても特別展の方にしか行かないのだから、この際行っとくべき。そう思って上野へ。
 正門の前にはいつものように人が多い。しかし、今は特別展で<国宝 薬師寺展>をやっているから、そっちのお客さんもかなり居るようだ。「国際博物館の日」についての特別な表示とか看板を見つけられなかったから、本当にタダ入場で大丈夫か?と一瞬気にはなったが、呼び止められるような気配もないから良いのだろう。
 国立博物館の本館は広い。まず特別陳列という扱いで「仏像の道−インドから日本へ」という企画展示を観る。昔、日本史の授業で習ったことのある、ガンダーラあたりの仏教美術が日本へ伝来する過程が紹介されていた。改めてインドの仏像の顔を眺めると、なかなかの「男前」に見える。日本の寺院で観る仏像の顔付きとは随分違うのだが、考えてみれば、仏教の発祥はあちらなのだから、インドの仏教徒からすれば日本の仏像の顔付きについて、ちょっとした違和感があってもおかしくはない。
 さて、その後はジャンル別の展示ということで、部屋数は大小合わせて10もある。ひとつひとつ丁寧に観ていくべきなのだろうが、時間をかけ過ぎるとどうせ集中力が保てなくなる。だから、程々のスピードで観させていただく。
 「彫刻」の部屋。鎌倉時代に作られた康円の<四天王眷属立像>や秋篠寺の<十一面観音菩薩立像>等が素晴らしかったのだが、福島の勝常寺の<広目天立像>は面白かった。みうらじゅん的な意味での「伝来ミス」ではないのだろうけれど、何だかやたらにゴツい。両目が近くて飛び出しており、威厳を示すと言うよりは、それを超えてユーモラスにすら見えてしまった。
 「陶磁」の部屋。網羅している訳ではないが、改めて日本の焼物の多彩さを実感した。特に、伊万里の皿の色合い(朱と青のバランス)や絵付けのデザインは今でも十分に通用するはずで、全く古さを感じない。また「工芸」の部屋には、高麗茶碗が特集陳列されており、そちらの方も興味深かった。
 その他、1階に「刀剣」や「漆工」の部屋があり、「芸術的」と言うより、芸術そのものである見事な職人仕事を堪能できる。観ていると、ずっと感嘆し続けることになる。
 最後の方に「近代美術」を集めた部屋があり、その中に大久保利通の肖像画があった。ちょうど僕がそこに差しかかったところで、前に居たおばちゃん二人連れが何やら話している。「ほら、ネプチューンの原田泰造がやっている人よ。」「あ〜、似てるわねー。」なるほど、大河ドラマの話らしい。
 さて、流すつもりでも1階を観るだけで1時間以上かかった。ちょっとよだきくなってきたが、2階へ。
 2階では「日本美術の流れ」という視点から陳列されており、こちらも10部屋ある。
 「仏教美術」の部屋には明恵上人の筆によるものがいくつかあった。だいぶ前に、河合隼雄の本で<夢記>のことを知ってはいたが、その断片が展示されており、読めはしなくとも感慨を覚えた。また「宮廷美術」の部屋にあった絵巻物に見覚えがあると思っていたら、<男衾三郎絵巻>だった。これも子供の頃に読んだ日本史の本で、鎌倉期の武士の様子を紹介するのに使われていたのを覚えていたから、現物は初めてでも、何となく懐かしく感じたりもした。
 そして、今回最も感銘を受けたのは「書画の展開」の部屋にあった、渡辺華山の<鷹見泉石像>である。もちろん有名な作品だが、僕は確か現物は初めてだったはず。限られた少ない線と柔らかな色合いで描き上げられているのに、何か凄みを感じる。顔付きがとても写実的だということもあるのだが、その4分の3正面でのポーズや実際には余白の方が多い画面等から受ける印象なのだろう。浮世絵のデフォルメ化された肖像も面白いが、このリアルさもやはり素晴らしいと思う。
 一応、ひととおり眺め終わると、2時間強かかっていた。途中で一度もソファーやベンチに腰を下ろさなかったから少々疲れは感じたし、何よりも情報量が多かったから、自分の中での整理も十分だとは言えない。まあ、ロハであったことを思えば、僕のような貧乏人からすればとても有り難い日であることは確かだった。
 
 
 
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